2011年5月16日
ビジネスアナリシス標準を持つことの重要性については十分理解できたと思います。BABOK®はビジネスアナリシス活動を行うために必要なタスクとテクニックを集めた知識体系でしかありませんので、ビジネスアナリシスを実践するためにはその方法論を組織のプロセス資産(BA標準)として持つ必要があるのです。
しかもそれも一つだけでなく、いくつかの方法論、例えばスクラッチ開発でのBA標準、クラウド活用する場合のBA標準、プロセス改善の場合のBA標準、...という具合に。しかし、それを一人のビジネスアナリストが作成するのは極めて大変なことです。外部コンサルタントに依頼するのが良いのでしょうか。外部の人が自分の組織のビジネスアンリシス標準を作成することができるのでしょうか。
一体誰が、どのようにしてBA標準を開発すればよいのでしょうか。
BABOKではソリューションを次のように定義しています。
「ソリューションとは、組織の現状に加える変更の集まりである。その変更はビジネスニーズを満たし、問題を解決し、好機を生かすために加える。」
よく考えると、ビジネスアナリシスも、ビジネスの問題を解決するために組織の現状に加える変更のひとつです。言い換えるとビジネスアナリシスもソリューションの一つなのです。
さらにBABOKでは、
「ほとんどのソリューションは、ソリューションコンポーネントが集まって相互作用するシステムである。 ...ソリューションコンポーネントの例をあげると、...ビジネスプロセス、ビジネスルール、ITアプリケーション、組織改正、 職務の見直しなどがある。」
ソリューションはコンポーネントが集まって相互作用するシステムですから、コンポーネントに分解しましょう。
ビジネスアナリシスというソリューションはとりあえず、下記のようなコンポーネントに分解してみましょう。この分類区分はビジネスアナリシス方法論GUTSY-4で使用しているプロセス改革区分を参考にしています。
-組織
-プロセス/ルール
-人(役割、スキル)
-IT・技術(ツール)
上記4つで全てかどうか、現時点では若干不確実なところがありますが、その不足分が明確になった時点で追加すればよいと思います。少なくとも現時点では上記4つのコンポーネントが必要なことが分かっています。
一つ一つ簡単に解説します。
1.組織(BACOE)
実は、このメルマガ読者なら既に解説をお読みになっていますので、重複は避けます。
BACOEのススメをお読みください。
『BACOEのススメ』(その1)
『BACOEのススメ』(その2)
『BACOEのススメ』(その3)
『BACOEのススメ』(その4)
上記連載では、「BACOE」をソリューションとして扱っていますが、ビジネスアナリシス(ソリューション)のコンポーネントとしてお読みください。
要は、このBACOEの中で「BA標準」作成チームが結成され、複数のプロセス資産を作成することになるのです。
2.プロセス/ルール
これがビジネスアナリシスの方法論に他ありません。
それを「BACOE」の重要な成果物として作成し、組織の中で展開し改善していきます。
『BACOEのススメ』の中から、一部紹介します。
・供給する資料(例:参考文献、テンプレート、ジョブエイド、ツール、手順書、メソッド、実践)
・サービス:ビジネスケースの開発、ポートフォリオマネジメントチームの支援、コンサルティング、メンターリング、標準の開発、品質レビュー、ワークショップのファシリテーション、プロジェクトチームへのビジネスアナリシスリソースの供給
3.人(役割、スキル)
これもBACOEのなかで規定しますが、ビジネスアナリストの定義です。
BABOKをベースとした、ビジネスアナリストの役割とスキルを定義します。
一口にビジネスアナリストといっても様々です。特定分野に特化したビジネスアナリストもいれば、分野にとらわれずに総合的に活躍できるビジネスアナリストもいます。組織において、どのようなビジネスアナリストがそれぞれ何人くらい必要でしょうか。そのスキルセットはどうあるべきでしょうか。またキャリアマップ、キャリアパスはどうあるべきでしょうか。
ここでカバーすることはたくさんあります。
-BABOK(知識体系)
-コンピテンシモデル
-専門資格(CCBAとCBAP)
-キャリアモデル
-キャリアパス
-教育・研修
その他
4.IT・技術(ツール)
ビジネスアナリシスを実践する上で必要な技術、ツールはどのようなものがあるでしょうか。これもBACOEの中で議論して決め、プロセス資産として持つことです。そして特定の案件に対しては、担当するビジネスアナリストがベストなものを選択します。
例えば、
-モデリングのための各種ツール(DFDツールや、UML用のツール)
-MSのVisio(プロセス記述用としてかなり汎用的です)
-要求(変更)管理ツール
などがあります。
今後重要性が増してくると思います。
長かった連載も以上で終了です。ご講読いただき誠にありがとうございました。
 

|