2011年3月23日
BABOK®の解説の中に、必ず、
「BABOK®は知識体系であり方法論(メソドロジー)ではない。
また特定の方法論を支持するものではない」
とよく言われます。筆者もそう言っています。では方法論は必要ないのでしょうか。実は方法論が必要なのです。
この辺の事情について詳しく書かれているのは、知識エリア「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」のなかの「2.3ビジネスアナリシスのアクティビティを計画する」タスクです。
まず、このタスクの内容を説明します(特に、方法論に関する部分を少し詳しく)。
「ビジネスアナリシスのアクティビティを計画する」タスクの概説:
ビジネスアナリストは、あるイニシアチブに必要なアクティビティとその
アクティビティの実行方法を決定し、関連する作業工数とそのアクティビティ
の所要時間を見積もる。このタスクには次のアクティビティが含まれる。
-ビジネスアナリシスの成果物を識別する
-ビジネスアナリシスのアクティビティに対する作業スコープを決定する
-ビジネスアナリストが、どのアクティビティを、いつ実行するかを決定する。
-ビジネスアナリシスの作業を見積もる
PMBOKをご存じの方はプロジェクト計画を思い出すと思います。その通りです。このタスクはビジネスアナリシスの活動も一種のプロジェクトとしとらえています。
このタスクへのインプットは以下のとおりです。
-「ビジネスアナリシスへのアプローチ(2.1)」
-「ビジネスアナリシスのパフォーマンスのアセスメント」
-「組織のプロセス資産」
-「ステークホルダーのリスト、役割」
この中で「組織のプロセス資産」としてビジネスアナリシス標準(方法論のこと)を持っていることが前提になっています。日本企業ではそれがまだないので、ビジネスアナリシスがまだ実践できないでいる状態です。早く組織のビジネスアナリシス標準(方法論)を作成する必要があるわけです。
「ビジネスアナリシスのパフォーマンスのアセスメント」も「組織のプロセス資産」と同様です。過去の経験を前提にしたものなのですが、日本ではまだ経験ないため難しい状況です。
続いて、このタスクの「要素」を見てみましょう。
.1ステークホルダーの地理的分布
.2プロジェクトとイニシアチブの種類
.3ビジネスアナリシスの成果物
.4ビジネスアナリシスのアクティビティの決定
ビジネスアナリシス標準に関係の深いのは、2,3,4です。
.2プロジェクトとイニシアチブの種類
-フィージビリティスタディ
-プロセス改善
-組織変革
-新規ソフトウェア開発(内製)
-外注によるソフトウェア開発
-ソフトウェアの保守と拡張
-ソフトウェアパッケージの選択
BA標準(方法論)として、ひとつだけでもいけません。複数のBA標準を持つことが必要であることを示唆しています。プロセス改善のためのBA標準(方法論)と新規ソフトウェア開発のためのBA標準(方法論)は異なります。最近ではクラウドコンピューティングが流行りです。パッケージの選択に相当します。また社内で何を持ち、何をクラウド化するべきかもBA標準(方法論)として持っているとさらに、よいと思います。
一つの方法論がいくつものイニシアチブの種類に対応するものもあります。例えば大きなサプライチェーンのような場合、プロセス改善(というよりプロセス改革)や組織変革をしながらERPパッケージ(SCM)を外注によりソフトウェア開発する。というような場合です。SCMの世界標準の参照モデルSCOR(Supply
Chain Operations Reference-model)は立派なビジネスアナリシスの方法論です。


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