2010年11月3日
BA(ビジネスアナリシス)COE(センターオブエクセレンス)の
ススメ (その1)
ごく最近もITPro EXPOや日経コンピューターのセミナーなどにより、ビジネスアナリシスやBABOKへの関心がますます高まってきました。弊社主催の無料セミナーも半年以上、毎回満員御礼の状態です。大変好ましい状況になってきていると言えます。
一方、具体的にビジネスアナリシスをどの用に実行したら良いのか、BABOKのタスクを自社の開発プロセスの中で実行するにはどうしたら良いのか、という疑問が大きくなりつつあります。これはBABOK自体が知識体系であり、プロセスを規定していないこともありますが、組織が変化を受け入れるためには通過しなければならない課題であるとも言えます。また、日本でBABOKを導入している企業はまだほんのわずかなため、成功事例を語れる組織は極めて限定されている状況でもあります。
そこで、ビジネスアナリシスを組織に導入するための一つの方法として、北米の多くの企業で実施されているBACOE(Business Analysis Center of Excellence)を紹介します。
今週から数回の連載の予定です。
最近のビジネス環境
最近のビジネス環境の変化は激しいものがあります。グローバル化、地球環境への配慮、後進地域の台頭(中国、インド、ブラジル...)。IT関係ではクラウドコンピューティングが話題にならない日はほとんどありません。これらの大きな変化はビジネスのあり方をより複雑にし、また大きな変化を余儀なくしています。自社だけで解決できることは少なく、他社とのアライアンス、パートナーシップ、などの必要性がますます重要になってきています。言い換えると、かつてないほど大規模なビジネスイノベーションが求められているのではないでしょうか。
ITベンダーも同様です。クラウドコンピューティングはユーザーのIT利用環境の根底を覆す大きなうねりとなっています。ユーザー企業はもはや、ITベンダーにシステム構築を依頼する機会は年年減少していきます。クラウドの中にあるソリューションを選択するだけになる可能性すらあります。ユーザーがシステムを発注しなくなったときに、ITベンダーに求められるものはいったい何でしょうか。ITベンダー自身が自分のビジネスを分析し、自分のビジネスニーズを決定する必要があるのです。
COE(Center of Excellence:センターオブエクセレンス)とは
企業やグループ全体での競合優位性(コアコンピタンス)を確保するために重点的に投資する研究・開発の拠点です。プロジェクトマネジメントの世界ではPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)が該当すると考えられます。 国家レベルでは、優秀な頭脳と最先端の設備環境を持ち、世界的に評価される研究拠点のことで、日本政府の「21世紀COEプログラム」が2002年に文科省で制定されました。これもCOE(Center Of Excellence)の一例です。
BACOEはビジネスアナリシスにおけるCOEで、企業全体の競合優位を確立するために、全社的組織として構築するものです。ビジネスアナリシスの作業標準の開発、ビジネスアナリシス教育、キャリアパス、ツールの整備、その他を担当します。
なぜBACOEが必要なのでしょうか:
1.BABOKは文字通り知識体系です。ビジネスアナリシスを実施するためには、自組織にカスタマイズする必要があります。その際に、利用部門で勝手にカスタマイズすると、効率が悪いだけでなく、不統一な用語の誤解などによるミスマッチのため、弊害すら予想されます。BAを導入しても効果が出ないだけでなく、マイナスになりかねません。全社で統一したカスタマイズを行う必要があります。
2.ビジネスアナリシトはどこに所属するべきかも決めておく必要があります。
事業部側が勝手にビジネスアナリシスを実施すると、システム全体の最適化が遅れる可能性があります。 また、IS部門側が勝手にやると、事業部側が反発する可能性も出てきます。組織全体で調和を保ちながら効果を高める方法を考えなければいけません。
3.育成、キャリアパスの定義
ビジネスアナリシスを実施し、継続的にビジネス価値を創出するためには、人材の育成が不可欠です。そのために、キャリア(人材像)を定義し必要なスキルを明確にし、教育体系を定義することも必要になります。それには人材、スキルに関して全社的に考える必要があります。


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