2011年4月25日
6.現状プロセスを記述する(レベル4)
レベル3のプロセス改革要求がまとまってきました。
今までの、プロセスの分析/設計の活動をまとめると下の図のようになります。

マネジメント&ERPインテグレーション資料より
図からわかるように、「現状と設計後のレベル3プロセス」が明確になり、「プロセス改革要求(レベル3、ITへのビジネス要求)」が策定できました。それらを基に、「プロセス改革企画書」(ビジネスケースに相当)が出来上がります。この方法論では、ビジネスケースを2段階で作成します。
フェーズ1では概算見積りとしての「プロセス改革構想書」(概算ビジネスケース)でした。図の一番上の部分の黄色の四角の一つです。これはフィージビリティスタディの結果をまとめたものです。見積り精度は高くありません。
フェーズ2においてレベル2、レベル3プロセスを分析/設計したのちに、見積り精度の高いプロセス改革企画書(詳細なビジネスケース)を策定します。
BABOK(R)では、「ビジネスケースを定義する」タスクは1度とは限定していませんから、このようなやり方でも構いません。むしろ、より現実的な方法といえます。
つづいて、標題の「現状プロセス(レベル4)を記述する」を解説します。
レベル4プロセスの分析と設計のステップを下図に示します。

マネジメント&ERPインテグレーション資料より
図のように、現状の記述、分析、設計として、
【310】現状プロセス(レベル4)の調査・記述
↓
【315】現状プロセスの課題の抽出
↓
【325】プロセス改革要求(レベル3)の構造化
↓
【328】レベル4プロセスの設計
4つのステップで実行します。カッコの中の数字はワークパッケージのID番号です。
この順に解説します。
まず、「現状のレベル4プロセスの調査・記述」です。

マネジメント&ERPインテグレーション資料より
「RFPの入手と回答」というレベル3プロセスを以下のような4つのレベル4プロセス(参照モデル)に分解してあります(上図の一番上のラインです)。
-RFP/RFQの入手の確認
-回答のためのリソース確保
-提案書・見積書の作成
-提案書・見積書の承認と送付
各々のレベル4プロセスについて、参照モデルをもとに、6つのプロセス構成要素についてインタビューで調査します。
1.プロセス機能
2.システム機能
3.インプット
4.アウトプット
5.業務ルール
6.担当責任(組織、人)
その結果を下図のEXCELシートに記述します。

マネジメント&ERPインテグレーション資料より
そして、プロセス構成要素ごとにまとめて、
-インプット/アウトプット記述書(現状)
-業務ルール説明書(現状)
などを作成します。
「現状プロセス課題(レベル4)の抽出」
全部備わっているプロセスもあれば、構成要素が欠けているプロセスも出てきます。はたまた、プロセスそのものが存在しないケースも。
上図の赤字が課題を抽出している部分です。
それらを、まとめると「レベル4プロセスの課題抽出」になります。
たとえば、インプット/アウトプットの
・エンティティの不足
・属性の不足
などがレベル4プロセスの課題となります。
また、業務ルールを整備する必要があれば、それもレベル4プロセスの課題となります。
「プロセス改革要求(レベル3)」の構造化
上位階層(レベル3)のプロセス改革要求をレベル4に構造化(4つのレベル4プロセスに機能分解)します。そして、レベル4のプロセス詳細記述書(下図)に記載します。

マネジメント&ERPインテグレーション資料より
最後に「レベル4プロセス設計」です。
上図のように、
「現状レベル4プロセス課題」を解決するためと: (青字の部分)
「レベル3プロセス改革要求」を実現するために、: (紫色の部分)
「レベル4プロセス」を設計します。 (右側の赤い枠の中)
上図をみると、簡単にレベル4プロセスが設計できることが分かります。しかし、それを可能にしているのが左側の部分のプロセス参照モデルです。レベル4では約500のプロセスが用意されています。
プロセスの階層構造を図解すると下図のようになります。

マネジメント&ERPインテグレーション資料より
単純なトップダウンだけでなく、下の階層の現状の課題を解決することを同時に実現するように設計していることが分かると思います。要求が上位から下位へとカスケードしていく構造です。トップの業務改革モデルがレベル2、3、4へとトレースされています。
同時にボトムアップとして、各レベルでの重要課題も解決するようにプロセス(その他)が設計されます。結果として、全ての要求が、トップの業務改革モデル(ビジネス要求)に整合することが保証されます。すなわち、ビジネス要求にソリューションが直結します。まさにBABOK®の思想を具現していることになります。
次回はレベル4プロセスの後半で、いよいよ「ITへのユーザー要求を引き出して整理する」です。
  

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