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【ビジネスアナリシス方法論とその経営的効果】(その3)

2012年2月6



3.ITへの要求定義

ハイレベルなプロセス(レベル2,3)では、具体的なITへのユーザー要求はまだ定義されません。より大きなプロセスまたは機能をどう改善(改革)するかに注目しています。

そして、レベル4において、ITへの具体的な要求を抽出していきます。





上図はビジネスプロセスのモデリングとITへの要求定義の関係を階層的に表したものです。

レベル3での(情報とITシステム)への要求は「顧客要求を共有・閲覧できる仕組みの構築」というものでした(前回の最後の図です)。

 

具体的な例を次の図でご覧ください。




上の図で分かるように、レベル4プロセスにおけるITへのユーザー要求をインタビューシートをもとに、ユーザーから引き出します。ここで、レベル4のプロセス参照モデルのプロセス構成要素を使えば、あらかじめ質問項目が決まっています(BABOKのテクニック「インタビュー」の質問を決めたインタビューに相当します)から余分な要求は入る余地がありません。かつ、この要求は階層構造のため、すべて上位階層にトレースされていますから、BABOKの「要求のトレーサビリティを管理する」タスクの具体的実践例ともいえます。ここで出てくるユーザー要求はすべてビジネス要求と整合されていることになります。金メッキ的な要求を排除することにもつながります。

単純なヒアリングでユーザー要求を引き出すと、余分な要望を取り入れることになり、スコープクリープにつながる恐れがあります。このビジネスアナリシス方法論ではそのようなことは発生しません。コード量(開発費用)の節約につながります。

 

レベル3まではITへのユーザー要求を考えずに、プロセス、ルール、組織、役割などへの要求を明確にしておくことが大切です。

 

4.業務プロセスの見える化とITシステム

レベル4のプロセスができれば、どの部分をIT化するかもおのずから決まります。

レベル3での(情報とITへの要求)の「顧客情報の共有・閲覧ができる仕組みの構築」の部分をIT化すればよいのです。

 




上の図のように、IT化する部分とそうでない部分が決まります。業務のすべてをIT化するのではありません。BABOKの「要求を割り当てる」タスクの目的は「ソリューションのビジネス価値を最大化する」ことです。本当に必要な部分、かつベネフィットが最大に得られる部分に絞ってIT化することになります。ビジネス価値(すなわちコストパフォーマンス)が最大になるようにします。

上記事例では非定型プロセスへのIT要求をまとめています。

-営業案件管理

ETO(特注品)の見積もり進捗管理

-提案仕様書作成管理

-設計の進捗管理

などです。

 

実装は既成のソフトウェアパッケージ、サイボウズの「デジエ」です。



 

5.ビジネスアナリシスの導入効果

最後にビジネスアナリシス方法論の導入効果です。




素晴らしい結果です。特注品は受注が増えると手間がかかり、かえって面倒になりがちです。案件ごとに要求が異なるため、RFP/見積もりを作成するのに、打ち合わせが多発していました。しかしこのように、受注が約2倍に増えたにもかかわらず、繁忙感がありません。すべてプロセス通りに情報が伝わっているからです。

IT(サイボウズ)にかかるコストは年間使用料、10万円程度です。ビジネスアナリシスを実践するとITコストも低く抑えられることがわかります。

必要最小限のことをIT化すればよいのです。