知識資産の最大化を実現するKBマネジメント 本文へジャンプ


フェーズ2: 人材戦略の立案




業務機能モデルの作成

このフェーズで初めてITSSが登場します。

ビジネス戦略が明確になれば、そのビジネスに必要な業務機能(職務)を定義します。

あまり難しく考える必要はありません、すでにITSSの11の職種(35の専門分野)があります。それを活用しましょう。さらに最近UISSも発表され、参照モデルとしても極めて有効です。

 

ITSSでは11の職種(キャリア)が分類されています。そのとおりに使えるなら最も簡単です。現実は1人のエンジニアがプロマネとコンサルを兼務しているとか、ITスペシャリストとアプリケーションスペシャリストの区別がない、という各企業固有の事情があると思います。ITSSはあくまで参照モデルですから、使えるところを利用する、という発想で大丈夫です。ビジネスニーズのない職種にこだわる必要はありません。

逆に、11の職種ではカバーできないという企業固有の業務機能(職務)があるかもしれません。ソフトウェアの品質を、ビジネス戦略上重要だと考えるIT企業もあります。その場合はソフトウェアQAという機能(職務)を追加しなくてはいけません。

セールスに戦略的重要性を考える企業では、プリセールスという機能が必要になります。これも追加することになります。プリセールスの機能の定義はITSSのセールスとコンサルタントを参照すれば比較的簡単に作成することができます。

ここで重要なのは、現状の業務を分析することではなく、将来(3年後程度)のビジネスニーズを予見することです。そのためにもフェーズ1のビジネス戦略(ビジネスプラン)にそのことが明記されている必要があります。

 

人材像(ToBeモデル)の作成

 業務機能(職務)が明確になれば、それをもとに人材像(ToBeモデル)を作成します。

ITSSのキャリアフレームワークが威力を発揮します。UISSも参考にしましょう。

最終的にはジョブディスクリプション(職務記述書)にまとめます。独自のスキルが必要な場合はそれも記述します。

 重点主義をお勧めします。ビジネス戦略に最も貢献する職種は何でしょう。そこに時間とコストをかけるべきです。全ての職種について同じレベルで人材像を作成する必要はないと思います。完璧な人事制度がビジネスを成功させる保証はありません。




出典: ITスキル標準V2 1部: 概要編

ビジネス戦略を遂行する上で重要なキャリアを明確にしましょう。



スキルの定義(追加スキル)

企業独自のスキル、知識を追加します。

ITSS/UISSでカバーされているものはそのまま使用すればよいのです。

80%90%カバーされていれば極めて楽です。製品知識程度の追加で済みます。

ユニークなビジネスをおこなっている場合、ITSS/UISSでは50%程度しかカバーできないかもしれません。しかし、独自のものをゼロから作ることを思えば楽ですし、市場の人材と共通の尺度が使えるメリットは大きいと思います。

 



 このフェーズで最も重要なことは、特定の市場で競争力を高める(戦略を実行するため)ように人材像を策定することです。すなわち競争力のあるユニークな人材像を作り上げることです。そのためには、あまりITSSの人材定義にこだわりすぎないことです。ITSSどおりの人材像ではどの企業も同じ人材像になってしまい、差別化ができず競争力には結びつきません。経産省もITSSは「参照モデルである」と言い切っています。

くどいかもしれませんが、また 「ITスキル標準V2 2006 1部:概要編」を引用します。

 

1.5 ITスキル標準適用上の留意点

ITスキル標準は、事業活動における個人の貢献を的確に評価しようとする観点から活用するべきである。人材育成への投資という経営判断やビジネス戦略が伴わないままITスキル標準を導入することは、自社のビジネスや技術を担い、競争力を支えていく人材の育成にはつながらない。ビジネス戦略に乏しく、単に人事管理上の便宜性や処遇制度の見直しのために利用するだけでは、逆に個人のモチベーション低下につながるおそれがある。

 

 また、ITスキル標準は、基準や仕様ではなく、参照モデルである。言い換えると、ITスキル標準は、人材育成にかかわるさまざまな立場の人が、共通の認識を持つために参照する指標である。「標準」といっても、自社のビジネス戦略の実現に必要な部分だけを参照すればよい。“全部を必ず使う”、“そのまま使う”という必要はない。

 

いかがでしょうか。

「ビジネス戦略」の重要性とその実現に必要な部分だけを使う「参照モデル」という考え方をご理解いただけましたでしょうか。

 逆に考えると、差別化をする必要がなく業界平均を実現できれば良いというキャリアや職務もあると思います。その部分は徹底的にITSS/UISSを活用することをお薦めします。

競争力をつけ差別化するべきキャリア/職務に関してはITSS/UISSのハイレベルな人材を育成するのみならず、ITSS/UISSにないユニークなキャリア/職務を作り上げることです。それがIT企業としてのコアコンピテンスを確立することにつながると思います。



ご意見を歓迎します。
連絡先: Mail to : KBマネジメント