知識資産の最大化を実現するKBマネジメント 本文へジャンプ

         【共通キャリア・スキルフレームワーク 第一版】の解説
                  (その3)

                                                  2009年1月26日


 

3.3 知識体系

3.3.1 知識とスキル

 知識とスキルに関しては簡単ですが、以下のような説明です。

知識:下の3種類に分類。

(A) テクノロジー系知識:コンピュータ言語やアルゴリズム、システム設計・開発

(B) マネジメント系知識:開発や運用に関わるもの

(C) ストラテジー系知識:ビジネス(インダストリ)知識、製品知識、コンプライアンスや関連法令
            知識、経営戦略的知識

 知識に関しては、次の3.3.2知識体系 で述べるように、こと細かな知識体系が用意されています。

 

 スキル:技術的スキルと非技術的スキル(ヒューマン系スキル)に分類しています。

  技術的スキル : 上記(A)(B)(C)を実践をとおして体得するものです。

  非技術的スキル:チームの取りまとめ能力やステークホルダー間の調整能力(ヒューマン系スキル)です。

残念ながらこれ以上に言及されていないため、スキルの詳細(特に非技術的スキル)は何も定義されていません。

 

3.3.2 知識体系

付録としてBOK(知識体系)が載っています。

大分類、中分類、小分類、そして具体的な知識項目のリストが載っています。

その一部を抜粋します。





「共通キャリア・スキルフレームワーク第一版」より抜粋

 

この内容は、情報処理技術者試験の出題範囲そのもののようです。それは後で述べますが、情報処理技術者試験がこの共通キャリア・スキルフレームワークに準拠しているから当然なのかもしれません。


 

3.4 3スキル標準との関係



「共通キャリア・スキルフレームワーク第一版」より引用

 

上図のように、準拠するのではなく、参照するだけですので、例えば共通キャリア・スキルフレームワークにはない「エデュケーション」職がITSSには存在します。

 

3.5 情報処理試験制度との関係



「共通キャリア・スキルフレームワーク第一版」より引用

 

準拠しているのは試験制度のみです。特に知識体系は試験の出題範囲と同じですから、準拠と言えるでしょう。

レベル4は上図のように、高度(プロフェッショナル)試験として、「ITストラテジスト試験」「システムアーキテクト試験」....と専門分野がわかれています。しかし、共通キャリア・スキルフレームワークの人材像の分類、「ストラテジスト」「システムアーキテクト」「プロジェクトマネージャ」「テクニカルスペシャリスト」「サービスマネージャ」とは完全には一致していません。具体的には「テクニカルスペシャリスト」が「ネットワークスペシャリスト」と「データベーススペシャリスト」にわかれていたり、逆に共通キャリア・スキルフレームワークの人材像には該当しない「情報セキュリティスペシャリスト」があります。またETSSに関連の深い「エンベデッドシステムスペシャリスト」もあります。

第一版なので仕方ないのかもしれませんが、準拠性がまだ不完全のようです。

現時点で注意しなくてはいけないのは、試験の専門分野がスキル標準のすべての職種をカバーしていないことです。例えばITSSのソフトウェア・デベロップメントは該当する試験がありません。少し詳細ですが、ITスキル標準V3 2008の概要編に分かりやすい表がありますのでご紹介します。


 

2.情報処理試験との対応関係

レベル

職種

専門分野

試験区分

注釈

レベル4

マーケティング

 

ITストラテジスト試験

 

セールス

 

ITストラテジスト試験

 

コンサルタント

 

ITストラテジスト試験

 

ITアーキテクト

 

システムアーキテクト試験
ほか

注1

プロジェクト
マネジメント

 

プロジェクトマネージャ試験

 

ITスペシャリスト

プラットフォーム

 

 

ネットワーク

ネットワーク
スペシャリスト試験

 

データベース

データベース

スペシャリスト試験

 

アプリケーション共通基盤

 

 

システム管理

 

 

セキュリティ

情報セキュリティ
スペシャリスト試験

 

アプリケーション
スペシャリスト

 

システムアーキテクト試験

 

ソフトウェア
デベロップメント

基本ソフト

 

 

ミドルソフト

 

 

応用ソフト

システムアーキテクト試験

 

カスタマサービス

 

ITサービスマネージャ試験

 

ITサービス
マネジメント

 

ITサービスマネージャ試験

 

エデュケーション

 

 

 

レベル3

応用情報技術者試験

 

レベル2

基本情報技術者試験

 

レベル1

ITパスポート試験

 

 「ITスキル標準V3 2008 概要編」より引用

 

この一覧表により、ITSS職種と試験区分の対応が一応明確になりました。自分の職種が一覧表に載っているエンジニアにとっては進歩と言えると思います。それなりに親切なものではないでしょうか。   しかし、この表に載っていないエデュケーションや、ITスペシャリスト(プラットフォーム、アプリケーション共通基盤)、ソフトウェアデベロップメント(基本ソフト、ミドルソフト)のエンジニアはどうすればよいのでしょうか。今後の課題のようです。

UISSETSSの職種と試験との対応は何も公表されていません。例えばETSSのドメインスペシャリストは情報処理技術者試験で測ることができるのでしょうか。 エンジン制御のスペシャリストと携帯電話のスペシャリストでは扱う技術が異なります。

QAスペシャリストはどうでしょうか。ITSSの世界では品質保証という概念そのものが希薄です。

また、ITSSのセールスは本当にITストラテジスト試験で良いのでしょうか。新規顧客開拓やリレーションの確立、アカウントマネジメントやファネルマネジメントなどセールス特有の知識・ノウハウが見当たりませんね。いくつかの課題があるようです。