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【要求プロセスのススメ】(その1)

2012年5月15




今週から連載で、「要求プロセスのススメ」をお届けします。

以下目次です。

1.なぜ「要求プロセス」が必要なのか。

1.1 BABOK(R)の「ビジネスアナリシスアクティビティを計画する」タスクの意味
1.2 具体的な要求プロセスとは

2.システム企画フェーズ

3.業務分析フェーズ

4.システム要求フェーズ

5.ベースライン要求と要求管理

 

1.なぜ「要求プロセス」が必要なのか。

ご存知のように、BABOKはビジネスアナリシスに必要な活動をタスクとテクニックの観点で体系化したものです。しかし、実際の仕事はプロセス化する必要があります。ビジネスアナリシスの活動も具体的なプロセスとして規定しなければ有効ではありません。

特に、3つの知識エリア「引き出し」「要求アナリシス」「要求のマネジメントとコミュニケーション」のアクティビティはビジネスアナリシスの中心的活動のため、特に重要です。

BABOKではプロセスを分解しタスクとテクニックにまとめてしまっているので、具体的活動がイメージしにくいという欠点があります。

例えば、下の図をご覧ください。




 

通常、私たちはプロセスとして左から右にアクティビティを実行しています。

例えば、インタビュー(テクニック)により要求を引き出し、それをもとにDFD(データフロー図)により要求分析(業務の分析など)を行い、その結果をステークホルダー要求にまとめます。

そのステークホルダー要求をもとに、ワークショップ(テクニック)を開催し、詳細な要求分析(たとえばUML/ユースケース)によりソリューション要求をまとめていきます。このように、プロセスとしてアクティビティは左から右に流れていきます。

一方、BABOKは知識体系としてまとめる方法として、タスクとテクニックの観点に注目していますから、引き出し(タスク)で使われるテックニックとして、

 -インタビュー

 -ワークショップ

 -フォーカスグループ

 -文書分析

 ...

などがリストされています。

同様に、分析(要求の仕様化とモデリングと)タスクに使われるテクニックとして、

 -データフロー図

 -データモデリング

 -プロセスモデリング

 -シナリオとユースケース

 -シーケンス図

  ...

などがリストされています。

さらに、アウトプットは「ステークホルダー要求」または「ソリューション要求」ですから、「要求を仕様化しモデリングする」タスクは少なくとも「ステークホルダー要求」を作成するためと「ソリューション要求」を作成するために、計2回は実行しなくてはいけません。また同じタスクでも「ステークホルダー要求」を作成するためのテクニックと「ソリューション要求」を作成するためのテクニックは同じである必要もないのです。

下の図のように、BABOKの知識体系は上から下にまとめられているといえます。

うまいと言えばうまいのですが、実作業のプロセスとかけ離れてしまっていることも事実で、ピンとこない、読者が多いのもうなずけるところです。




さらに、「引き出し」はBABOKガイドの第3章で扱われていますが、「要求アナリシス」は第6章です。プロセスとしてはつながっているものが、BABOKの知識体系ではかけ離れた章立てに組み立てられているのもわかりにくさを増幅してしまっているかもしれません。

ですから、ビジネスアナリシスを実践するためには、なおさら自分の組織にあったプロセスを持つ必要があるのです。じつはそのようなプロセスを持つ必要性をBABOKの知識エリア「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」の中のタスクで謳われています。

 

1.2 BABOK(R)の「ビジネスアナリシスアクティビティを計画する」タスクの意味

このタスク(2.3)の要素.4BABOKガイドP36)を見てみましょう。

.4ビジネスアナリシスアクティビティの決定」では、「プロジェクトをフェーズに分解するWBSもある」と明記されていますから、組織に適切なWBSを作成しておくのが好ましいのです。

さらに「ワークパッケージは多数のアクティビティを含み、さらに小さなタスクに細分化できる。アクティビティやタスクをこのような分解によって、アクティビティリストを作る」ことが推奨されています。

具体例を示します。




        ソフトウェアプロセスエンジニアリング(株)資料より

 

上の図のように、ワークパッケージを構成しておくのが好ましいのです。

 

では、具体的にビジネスアナリシスのアクティビティを計画してみましょう。特に要求定義と管理にフォーカスしたプロセスです。日本のマーケットでは、システムインテグレ―ションとして最もニーズの高い領域です。

 

1.2 具体的な要求プロセス

要求を定義するプロセスを4つの大きなフェーズに分解します。

 -システム企画フェーズ

 -業務分析フェーズ

 -システム要求フェーズ

 -ベースライン要求策定

 

次号以降で、これらのフェーズの詳細を解説します。