2010年9月21日

タスク【組織の能力ギャップをアセスメントする】
ビジネスニーズを満たすために、組織に不足している能力を明確にすることです。重要な要素が2つあります。
[要素1:現状の能力の分析]
まず、自組織の能力を徹底的に分析し、理解する必要があります。現状のビジネスのアーキテクチャと技術のアーキテクチャがどのようにしてビジネスを実行しているかを理解することです。
「コンビニで住民票」では、住民票発行の処理とコンビニの高速ネットワーク機能などが相当します。
「ワンタイム保険」では、GPS付き携帯電話の機能と保険業務(他社)などです。
[要素2:新しい能力の要求に対するアセスメント]
能力の例としては、
-ビジネスプロセス
-アプリケーションソフトの機能
-組織が創出する製品
-組織が提供するサービス
-人材能力
などがあります。
ビジネスアナリストはビジネスニーズを満たすために必要な新しい能力を特定します。
組織が提供する製品やサービスそのものも「能力」の一部です。
異次元コラボで提案しているものは「組織が創出する製品」もしくは「組織が提供するサービス」に相当します。しかも「無自覚」でこれらを実践していることに驚きます。逆に見れば、どれだけ試行錯誤があったのでしょうか。大変な苦労をされたのではないでしょうか。「自覚した」ビジネスアナリシスならもっとスマートにできたかもしれません。
一般には、プロセスや組織のギャップを見つけることが多いので少し触れておきます。
能力ギャップはバリューチェイン(有名なマイケル・ポーターのValue Chain です)を考えると明確になることがあります。

バリューチェインには大きく分けて、主活動と支援活動があります。主活動は、購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスなどからなります。一方、支援活動は、購買活動、研究技術開発、人事・労務管理、ITなどです。
例えば主活動において:
プロダクトの製造はどの組織が担当するのか。その組織の製造能力は十分かなどを診断します。最近はITが製造工程で大きな役割を果たしている業界をよく見かけます(製造業)。受注内容がそのまま製造工程に反映(BTOなど)する例まであります。さらにSCM(サプライチェーンマネジメント)とのリンクもありえます。SCMは最近標準化されたプロセスとしてSCOR(Supply Chain Operation Reference model)が有名です。
生産能力はどうでしょうか。市場のニーズ(ビジネスニーズ)に対応できるだけの能力が備わっているでしょうか。もし、市場が右肩上がりの状態であったら、製品を十分に供給できるでしょうか。不足していたら、セカンドソース(これも能力ギャップ)を考えなくてはいけないかもしれません。
出荷物流もITの活躍する場面が多くなっています。コンビニなどではPOSにより、リアルタイムでの商品別売り上げデータから、調達、在庫管理、物流までが密接にリンクされています。業界によっては出荷物流の能力がコアコンピテンスとなりうるのです。
販売・マーケティングの能力はどうでしょうか。販売能力(チャンネル)はあるのか。不足していないでしょうか。補う方法はどんなことでしょうか。
支援活動において:
ITインフラは十分でしょうか。基幹システム、メールサーバーは今後のビジネス展開を十分サポートしてくれるでしょうか。ネットワークのパフォーマンスは十分でしょうか、など。
研究技術開発は十分でしょうか。すべてを自分たちで提供できない時代になりました。他社とのコラボレーションを考えると、経営資源を集中するべき点が見えてくるのではないでしょうか。
全活動が有機的にリンクしている必要があります。コラボレーションの場合特に重要である。各プロセスが切れ目なく、ダブりなくつながっていなくてはいけません。ここでも「能力ギャップ」がないかどうか、チェックする必要があります。
ここで重要なことは、まだ ITを考えるべきではないということです。最初からITをソリューションとして前提にすると本当の解決策を見失う可能性があります。ITベンダーとの付き合い方が難しいところです。
タスク 「ソリューションアプローチを決定する」
ここでは、能力ギャップを解消するためのソリューションアプローチ(方針)を考えます。BABOKではできるだけ多くのアプローチを考慮するのがよいとされています。
ソリューションアプローチの例は以下のとおりです。
-サプライヤからハード/ソフトを購入・リースする
-ソフトを自社開発する
-人員増または組織変更で対応する
-プロセスを改善する
-他組織とのコラボレーションやアウトソース
各々のアプローチを比較し、最善のものを選ぶようにします。考慮することはアプローチによるベネフィット(効果)、実現するためのコスト、リスク、実現のしやすさ(技術的その他)などです。
重要な要素が3つあります。
[要素1:代替案の作成](なるべく多く作成します)
異次元コラボでは、それなりに代替案もあったと思います。残念ながら記事では結果しかわかりませんので推測は難しいところです。例えば、「ワンタイム保険」では、別の保険会社も候補に挙がっていなのではないだろうか。またベンダー選定は悩んだのではないでしょうか。誌上では、冒険しないことを推奨しているようです。
ベンダー選定は極めて重要です。BABOK®2.0の共通テクニックには、「(9.34)ベンダーのアセスメント」が紹介されていますので、参考にされることを勧めます。
[要素2:前提条件と制約条件]
コラボの場合は、自社だけで実現できないため多くの前提と制約があります。ソリューションが本当に実現できるかどうかの見極めが大切です。
[要素3:アプローチのランク付けと選択]
有効なテクニックはブレーンストーミングです。いくつかのアプローチをリストアップし、スコアリングシートにまとめるのが有効です。ベネフィット、コスト、実現のしやすさなどを考慮します。

タスク 「ソリューションスコープを定義する」
方針(ソリューションアプローチ)が決まれば、そのスコープを定義します。
異次元コラボの場合はまさにここが重要なポイントとなります。
ソリューションアプローチ(方針)が決まったとすれば、どの部分(コンポーネント)をコラボ先にアウトソースし、残りのどの部分を自分たちの組織で仕事をするのかを決めなくてはいけません。
ここでは、重要な要素が3つあります。
[要素1:ソリューションスコープの定義]
ソリューションの主要なフィーチャ(仕様と機能)とスコープ外の関係者/システム
との相互作用を明確にする。
ソリューションのスコープを決めることはおなじみのことだと思います。

財団法人 地方自治情報センター資料
[要素2:実装のアプローチ]
どのようにソリューソンスコープをデリバリするかを記述する。
異次元コラボでは、コラボ先に依頼したどのコンポーネントを、いつ実現するのか、そのタイミングやロードマップを記述したりします。
ここがしっかりしていないと、異次元コラボは単なるアイデア倒れになってしまいます。
[要素3:依存関係]
ビジネスイノベーションやコラボレーションの場合は特に重要です。
異次元コラボの例でいえば、自社、コラボ先、ITベンダーの仕事の役割分担を決める
ことに他ありません。

財団法人 地方自治情報センター資料
コンビニでの住民票発行の依存関係の例です。
BABOKの知識エリア「エンタープライズアナリシス」の各タスクに当てはめてみると、事例として取り上げた異次元コラボが、結果的にビジネスアナリシスを実行していたことがお分かりになると思います。それも試行錯誤のままで。
すなわち、ビジネスイノベーション(異次元コラボを含む)にはBABOKのプラクティスがそのまま適用できることを意味しています。
ビジネスアナリシスやBABOKの知識を身につければ、作業のモレをなくし無駄を省き、システマチックに物事を決め、ビジネスイノベーションを効率的に実現できるようになると言えます。「無自覚」のビジネスアナリシスのままでは成功を繰り返すことは難しいと思いますが、BABOKを学習し、「自覚した」ビジネスアナリシスを実践してみてはいかがでしょうか。
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