知識資産の最大化を実現するKBマネジメント 本文へジャンプ

BABOK®(ビジネスアナリシス知識体系) 解説(その5)

2009316

 

 

以下のBABOK®2.0の概要は昨年10月にIIBAメンバー向けに発表された資料(Webinarテキスト)を基に作成したものです。331日の正式版ではありませんが、大きな相違はないと信じています。もし相違があればその時点で差し替えさせていただきます。あらかじめご了承ください。

 

3. BABOK®の内容(概要)

 BABOK®2.0の概要を説明します。

 

ビジネスアナリシスは、

 -組織はなぜ存在するのか(存在理由)

 -組織のゴールと目標は何か、

 -そして、それらの目標を達成するためにはどうするべきか

を十分理解し、

ビジネス上の問題を解決するための方策を定義します。

 

以下に、6つの知識エリアと基礎スキル(Underlying Competencies)について解説します。

 

3.1.1 6つの知識エリア

 次のような6つの知識エリアがあります。

-ビジネスアナリシスのプラニングとモニタリング:  全体の活動計画です

-引き出し:さまざまなテクニック(インタビューその他)を用いて要求を引き出します

-要求の管理と伝達: 要求の変更管理と関係者へのコミュニケーションです

-エンタープライズ分析: 何故(WHY)このプロジェクトが必要なのかを明確にします

-要求分析: 何を(What)ソリューションがするべきかを明確にします(モデリング)

-ソリューションの確認と検証: するべきことが本当にできているかを明確にします

 

6つの知識エリアの関係図です。




かなり入り組んでいることがお分かりになると思います。

知識エリアであり、プロセスエリアではありませんので、作業の順番を規定しているわけではありません。

 

各知識エリアではタスクとそのタスクで使用されるテクニックなどが紹介されています。


タスク:

 すべてのビジネスアナリシスで遂行されるコンポーネントで、必要に応じて、何度でも実行されるものです。
 必ずInputOutputがあります。タスクは「~を管理する」、「~を計画する」などすべて動詞表現で記載されます。

 

テクニック:

 タスクが実行される特定の環境や条件を記述したもので、タスクは1つ以上のテクニックを使用しています。

注意: テクニックをすべて網羅しているわけではなく、BAコミュニティの多数で使用されていて価値が認められて
     いるものだけが紹介されています。参考例と考えてください。

 

3.1.2 知識エリア 「ビジネスアナリシス プラニングとモニタリング」

 この知識エリアはBAを完成させるのに必要な活動を明確にします。

6つのタスクからなります。最初の知識エリア(以下KA)ですので、Input/Outputを詳細に書きます。


Inputは 「エンタープライズ分析」知識エリアの「ビジネスニーズ」と、エンタープライズアーキテクチャ など組織のプロセス資産です。

 

2.1 ビジネスアナリシス(以下BA)アプローチを計画する 

アプローチには、ウォーターフォール、アジャイル、BPR、シックスシグマなどたくさんの方
法があります。ビジネスニーズ(課題)を解決するのにはどのアプローチが適切かを判断します。

    Output[BAアプローチ]はタスク(2.3)、タスク(2.5)のInputです。

2.2 ステークホルダ分析を指揮する

   ビジネスニーズやソリューションに最も影響を受ける(与える)ステークホルダを特定
     します。
     誰から要求を引き出すべきかをあらかじめ明確にしておく必要があります。

    Output[ステークホルダリスト]はタスク(2.3)、タスク(2.5)のInputのみならず、
     知識エリア(以下KA)「引き出し」、KA「要求の管理と伝達」、KA「要求分析」のInput
     となります。

2.3 BA活動を計画する

    Output[BA計画]はタスク(2.4)、タスク(2.5)、タスク(2.6)のInputのみならず、

    他の5つのKAへのInputです。

2.4 BAコミュニケーション(伝達)を計画する

    知識エリア「要求の管理と伝達」のプラニングです。

    Output[コミュニケーション計画]KA「要求の管理と伝達」のInputです。

2.5 要求管理のプロセスを計画する

    Output[要求管理計画]KA「引き出し」とKA「要求の管理と伝達」のInputです。

2.6 BAパフォーマンスを管理する

    Output[BAパフォーマンス診断]はタスク(2.3)のInputです。

 

図解すると以下のようになります




この知識エリアのOutputは他の5つの知識エリアのタスクで使用されます。

使用するテクニックも

-決定分析

-プロセスモデリング

-構造化ウォークスルー

その他、たくさんあります。

 

3.1.3 知識エリア 「引き出し」

4つのタスクがあります

3.1 引き出しの準備をする

3.2 引き出しを指揮する

3.3 引き出した結果を記述する

3.4 引き出した結果を確認する

 




タスクは単純ですが、この知識エリア(以下KA)で重要なのはリストされているテクニックです。

さまざまなテクニックを駆使して、要求を引き出します。BA活動の要(かなめ)とも言うべきものです。

要求の引き出しに有効なテクニックの例です。

-ブレーンストーミング

-ドキュメント分析

-フォーカスグループ

-インターフェース分析

-インタビュー

-観察

-プロトタイピング

-要求ワークショップ

-サーベイ

テクニックの解説は省略します。一つ一つ奥の深いスキルです。知識があっても役に立ちません。実際にできるようにならないと意味がありません。これらがどれだけできるかによってBAの成功・不成功が決まってしまうと言っても過言ではありません。


3.1.4 知識エリア 「要求の管理と伝達」

このKAには、以下の5つのタスクがあります。

4.1 ソリューションスコープと要求を管理する

4.2 要求トレーサビリティを管理する

4.3 再利用のため要求をメンテナンスする

4.4 要求パッケージを準備する

4.5 要求を伝達する

 

図解は以下のとおりです。




以上3つの知識エリア「BAプラニングとモニタリング」「引き出し」「要求の管理と伝達」は主にステークホルダとのやり取りを行います。

 

残りの知識エリア「エンタープライズ分析」「要求分析」「ソリューションの診断と検証」は分析と問題解決の作業と言えます。