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ITSSユーザーズカンフェランス2008 レポート 【前編】

20071212日(水)に開催されたユーザーカンフェランスの報告です。

出席できなかった方のために、少しでも雰囲気を味わっていただければと思います。

 

会場がなんと目黒雅叙園でした。ユーザー協会としては珍しく豪華な場所でした。

 

一つ一つのセッションをレポートするより、全体像をお届けしたいと思います。

何といっても今年の最大の関心は、3つのスキル標準(ITSS/UISS/ETSS)と情報処理技術者試験の融合の是非です。推進する立場の経産省情報処理振興課の方(八尋課長欠席でその代理の方)、産業構造審議会情報サービス・ソフトウェア小委員会人材育成ワーキンググループ座長の有賀氏、IPAスキル標準センター長の丹羽氏、そして反対する立場の日経BP社田口氏。これら4つのセッションを報告します。

 

経産省情報処理振興課のセッション:(すみません課長の代理の方のお名前を忘れました)

IT政策の概要です。インドや中国のIT人材の例など、大変興味深いものがありました。

産学協同でIT教育を進めることが、文科省と経産省の大臣どうしで合意されたとのこと。大変好ましいと思いますが、遅きに....とならないことを祈ります。

産業構造審議会の提言をそのまま実現するつもりのようです。

パブリックコメントの意見提出者は127名(清水もその一人)とのこと。

12/中旬をめどにIPAで最終報告書を公表するとのこと。楽しみです。

 

講演内容は以下のURLを参照ください。

http://www.itssug.org/docs/conference2008/keynote1.pdf

 

 

CSKホールディング 代表取締役 有賀貞一様:

産業構造審議会の座長を務められた方です。IT業界では有名なのでご存知の方が多いと思います。JISAの副会長でもあられます。いつも高い見識のご意見を聞かせていただいています。

産業構造審議会の話にフォーカスして報告します。

高度IT人材類型として7種類。

 1.ストラテジスト

 2.システムアーキテクト

 3.サービスマネジメント

 4.プロジェクトマネジメント

 5.テクニカルスペシャリスト

 6.クリエータ

 7.その他(ITSSのエデュケーション)

 


経産省「人材育成ワーキンググループ報告書」より

 

1から5を情報処理技術者試験でレベル認定(レベル3までとレベル4の一部)するという乱暴な考え方を進めています。

 人の能力を3つ(知識、経験、実績)でとらえ、レベル3までは情報処理技術者試験でレベルを判定する。レベル4は試験プラス経験・実績で評価する、というお話です。理解できますか?

試験で計測できるのは知識のみです。そしてレベル3は「独力で仕事ができる」という定義ですよね。知識だけあれば「独力で仕事ができる」と判定するのは誰が考えてもおかしな話ではないでしょうか。経験と実績がなければ「独力で仕事ができる」ことを判定することはできないはずです。

 産業構造審議会の提言が既成事実となりつつあり、大変危惧しています。

皆さんはどうお考えでしょうか。



経産省「人材育成ワーキンググループ報告書」より

 

 講演内容の詳細は以下のURLを参照ください。

http://www.itssug.org/docs/conference2008/seminar1.pdf

 


 

日経BP社 田口 潤氏:

セッションタイトルも「ITSSの普及に危険信号!? 〜産構審の提言は何をもたらすか〜」

このタイトルそのものが挑戦的ですね。内容もそのとおりでした。

ポイントだけ。 一番言いたいと思われるスライドを紹介します。

 


かなり辛辣ですね。筆者も同感です。

でもご本人は言いたいことの半分も言っていないと申されていました。

 

 

 講演内容の詳細は以下のURLを参照ください。

http://www.itssug.org/docs/conference2008/seminar5.pdf

 

 

IPA ITスキル標準センター センター長 丹羽雅春氏
田口氏のセッションを聞かれ(ショックを受け?)、その後での講演なので大変やりにくそうでした。
来年3月改定予定のITSS/V3(試験制度を取り入れるという改訂)を解説されました。なぜ試験なのか、本当に試験で判定できるのか、の疑問には最後まで回答されませんでした。質問も受け付けないので(受け付けるととんでもないことになることが目に見えています)、納得感のない講演でした。
挙句の果てでしょうか、資料集にないスライドを出されましたのでそれだけご紹介します。

 −レベル評価の方法(ITSS認定、試験が併存)

 −100%試験ではありません

苦肉の策がよく表れています。同じIPAのなかに情報処理技術者試験センターもあり、ITスキル標準センターもあり、特に新任のセンター長としてはIPA内での立場も微妙かもしれません。

 よく聞いていると、時々咳きこんだりされていました。言いづらいこと、自分の気持ちに反することを言わざるを得ない時に出てくる、人の本音を観察したような気がします。だれでもおかしいと思っていますが、立場上..... 

 

 講演内容は以下のURLを参照ください。

   http://www.itssug.org/docs/conference2008/seminar2.pdf

 

 

懇親会:

夕方、恒例の懇親会がありました。

誰に聞いても試験でレベル判定できるわけがないと思っています。しかし表だって反対を表明されるのは田口氏のみ。ユーザー協会にしても田口氏のセッションを設定するのが関の山でしょうか。割り切れなさを感じている人はかなり多いようです。スキル標準センター自身も納得していないようです(清水の推察)。政治力に弱いIT業界を感じます。


【後編に続く】