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スキル標準成熟度モデル(Skill Standard Maturity Model)

ビジネス戦略/
ビジネス効果
人材像/
GAP分析
教育体系/
キャリア計画
レベル認定 その他
レベルU ・ビジネス戦略あるがスキル標準とリンクしていない ・人材像はスキル標準をそのまま利用している

・GAPがスキル項目レベルで管理されている
・教育体系はITSSロードマップそのまま

・個人別教育体系ない(ビジネスとのリンクなし)

・他社(関連会社)の実施している研修をそのまま取り入れている
・社内認定はしているがサイロの状態 ・スキル標準を導入しただけで、まだ活用されていない

・スキル標準は役に立つのか疑問に思っている



  レベル2: スキル標準が社内で認知されているレベル。

          診断は職種のレベル判断ではなく、ITSSに基づくスキル項目を管理するために実施している。

          教育体系はITSSに準拠したものになっていて、ITSS研修ロードマップをそのまま使用している。ビジネス戦略と教育はリンクしていない。

          個人のキャリア目標がある。しかし組織の戦略とはまだ結びついていない。個人別教育計画はあるが、まだ効果が発揮できていない。

          ビジネス戦略を一応持っている。しかしITSSにはまだリンクしていない。

          社内認定制度を実施している。社内独自の認定なので外部との整合性は関連はない。サイロの状態。

          エンジニアのモチベーションとの関係がまだ不明確。仕方なく認定を受けている印象が強い。

 


いかがでしょうか。ITSS導入を謳っている組織の多くがこのレベルに近いのではないでしょうか。

定義としては、上記項目の全てを達成した状態をレベル2.0とします。一つでも欠けていると、まだレベル2ではなく、レベル1.Xとします。半分達成していれば、レベル1.5になります。

部分的に達成している組織は多いと思います。それだけ、このレベルは重要です。

早く、上記項目の全てを達成するようにしていただければ、と思います。

 

ある項目は基準以上だが、ある項目は達成していなくて、平均値を考えても良いのでは、と思われるかもしれませんが、残念ながら認められません。平均ではなく、全ての項目をクリアしてレベル2.0とします。特定の項目が基準以上であるのは差し支えありません。次のレベル3に到達しやすいということです。

 

レベル2の問題点はいくつかあります。代表的な物は次のとおりです。

 1.   まだビジネスに貢献していない

 2.  エンジニアの不満

 3.   人事先行の問題

などです。

 

1.最初のビジネスへの効果です。

まだ、ビジネス戦略とリンクしていないため、ビジネスの結果とリンクしていません。人材をITSSのキャリアマップに無理やり当てはめているので、実際の実務とのかい離があります。必要な人材像がビジネス戦略と結びついていないため、ビジネス上の効果が見えません。

PMBOKなどにより、プロマネは育ってきていますが、変化するユーザー要求までは把握しきれず、赤字プロジェクトの解消にまでは至っていません。ITSSを導入すれば、ビジネスに効果があると思っていると、幻滅を味わうことになります。

しかし、まだビジネス戦略とスキル標準がリンクしていませんから仕方ないことです。早くリンクするように改善のサイクルを回しましょう。

 

2.エンジニアの不満:

ただでさえ開発業務で忙しいのに、資格取得、認定の準備で休む暇なく働いています。昇給・昇格の条件として、教育・研修を受講するのですが、受講しても座学が多く意味のないものが多く時間の無駄使い、と思われてしまっています。

会社とエンジニアとのコミュニケーション不足が主な要因です。

 

3.人事部門の先行の問題:

ビジネス上の意義、ビジョン(ITSS導入後のあるべき姿)が示されないまま導入し、いきなり処遇(給与体系)にリンクされてしまっているケースがあります。

要領よく認定されれば給与が上がりますが、まじめに実務をこなしていて、認定を受ける暇すらないエンジニアはレベルが上がらないままです。さらに人件費の総枠は一定のため、認定者に厚く配分されると、まじめなエンジニアの給与はむしろダウンしかねません。

これが、さらにエンジニアの不満を増加する要因になります。

労働組合がある場合、もめること必至です。

 

このレベルで最も困るのは、上記のような問題が発生すると、「ITSSは役に立たない」とか、「コストだけかかり効果がない」と早合点しがちなことです。

そして経産省が音頭を取っているのだからITSS導入に失敗したとは言えず、また元請けの要請のために、形だけ導入しています。しかし本音では早く辞めたいと思ってしまうことです。

 

経営者のリーダーシップが不十分だとこのレベルで止まってしまうケースが多いと思います。

経営者がリーダーシップをとっても、ビジネス戦略が明確でないとやはりこのレベルで止まると思います。スキル標準はただの道具ですから、ビジネスの目的がない所に道具だけ持ってきても使い道はありません。

いずれにしても、スキル標準導入の品質はまだ十分ではありません。

 

なお、経営者のリーダーシップが十分発揮されていて、ビジネス戦略も明快な場合、このレベル2は単なる通過点となります。PDCAを回して改善することで、早く次のレベル3に到達することができます。