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標準の確立

2011年9月12


キャサリン・バレット(IIBAPresident&CEO)の「標準の確立」を紹介します。

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今月のニュースレターのテーマは「標準の確立」です。

組織に効果的に、繰り返し可能なビジネスアナリシスを導入するために、極めて重要なステップです。私の以前の職場のモントリオール銀行においても、実際に必要でした。それがきっかけでこのIIBA設立のアイデアの元にもなっています。2002年にツールやテンプレートを含むビジネスアナリシスのプロセス標準を定義するタスクフォースにアサインされ、ビジネスアナリストの役割規定を策定し、教育課程を開発し、内部の表彰制度(Recognition Program)を確立しました。当時は、これらをサポートできる外部のプロフェッショナル組織はありませんでしたので、オリジナルグループが集まって、200310月にIIBAを立ち上げることになりました。

 

ビジネスアナリシス標準がなぜ重要か、それがなぜビジネスアナリシスの正しい実装を確実にしていく上で不可欠なのか、についての私の考えです。

 

自分のToDoリストを見て「今日何をするのか」を考えることからその日の行動を考える人はどのくらいいるでしょうか。目の前のタスクをどのように処理するかを決め、実行する前にタスクの詳細が既に文書化されている、そのような人はそう多くないのではないでしょうか。私もできたらよいのですが。

 

(もしそれができれば)皆さんは自分のリストを見て、それに沿って仕事を始められます。仕事のやり方の個人的標準があれば、各タスクをどのようにすればよいかを考え出す必要はありません。How(どのようにするか)に悩む必要はないので、何(What)をするべきかに注力できます。

 

組織のビジネスアナリシス標準の確立も同じメリットがあります。各々の業務やタスクのやり方に悩む必要はなく、標準に従って業務を行えばよいので、より効果的に仕事ができるのです。

 

例えば、プロセス、運用ガイドライン、テンプレートなどが標準の例です。ビジネスアナリシス知識体系(BABOK(R)ガイド)とIIBAビジネスアナリシスコンピテンシモデルは、共に業界に受け入れられている標準で、世界中のビジネスアナリシスの実践を通じて、組織的または個人的なインプットにより継続的に改善されていきます。

 

標準を確立するもう一つの理由は、確実に整合性のあるアウトプットを創出できることです。組織の別の人の成果は、あなたのアウトプットに依存します。あなたの仕事のアウトプットが整合性に欠けると、チームはあなたの仕事の内容を理解する余計な努力を強いられるばかりでなく、どのようにアウトプットが構築されているかまで理解しなくてはいけません。

 

標準があれば比較の基礎にもなります。時がたつにつれ、標準を継続的にアセスメントし、計測し、改善する方法を確立することができるようになります。

 

もちろん、標準を確立する際には、限定しすぎたり、過度にエンジニアリングする必要はありません。異なる環境に標準を適用するためにはある程度の柔軟性と、特定の状況に対応するためにはどのように標準を変更できるかを理解する必要もあります。

 

標準を確立することは意味のあることですが、なぜ多くの企業では、標準を採用し適用することをためらうのでしょうか。

 

一部の人は、標準を確立することは、仕事のやり方に関する創造性を破壊することだと思っています。しかし実際は標準があれば創造性を支援してくれるのです。

標準はプロセスと手順を教えてくれ、問題の解決や課題に対し創造的に対応できるようにより多くの時間をもたらしてくれますから、結局は時間を節約できます。

 

もう一つの懸念は、人々は一般的に変革を好まないということです。標準を採用することは、従来とは異なるやり方を意味し、仕事のやり方を変更することだからです。

 

どのようにこれらの懸念に対処したら良いでしょうか。人々を標準に移行することを支援するプロセスは、新しい標準と同様に重要です。使用してもらいたい標準の観点で、人々がどこにいるのかを理解しなくてはいけませんが、なかなかできないのです。多くの組織においても、変革が失敗する最大の理由のようです。――変革に影響される人々を考慮しないリーダーの過ち、と言えます。

 

 

標準を実装する方法

標準を実装することは、組織に変革をもたらすことを意味します。

 

BA(ビジネスアナリスト)として、確実に移行を成功するために、BAツールキットを準備します。まず、自分がどこにいるのか、現在の状況を理解する必要があります。また、他のビジネスアナリストが相対的にどこにいるのかを理解し、どのビジネスアナリシスのプラクティスを組み込みたいのかを明確にします。

 

次に、基本的な要素を取り上げ、将来のあるべき姿、必要な状態を決定します。重要なステークホルダーを関与させ、組織が成功するために本当に必要なものを決定します。また、将来の状態への移行のための計画を策定する際、組織的変革の観点から何が妥当であるかを考慮してください。変革を急激に早くやりすぎて失敗するよりも、徐々にゆっくり実装することの方がはるかに効果的です。

 

実装を支援するために、BABOK(R)ガイドの知識エリアを参照することができます。

・エンタープライズアナリシス:
誰が関与するべきか、将来の姿は、成功とはどんなものでしょうか?

 

・ビジネスアナリシスの計画とモニタリング:
将来の状態に到達するためにどのタスクを達成しなくてはいけないか?

 

・要求のマネジメントとコミュニケーション:
その変革が起こることを理解し、それを管理する方法を決定します。どのように、組織が実装する際に発生する変化に適応できるか支援したらよいでしょうか。そしてどのように変革の一部である個人に対してそれを適切に伝えたらよいでしょうか。

 

標準を確立することはもちろん重要ですが、標準に移行するという組織的変革を

管理することは、実装を確実に成功させるために最も重要なことです。

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いかがでしょうか。キャサリンはCEOだけのことはあります。ビジネスアナリシスの標準の重要性のみならず、その組織的変革を管理しリードすることの重要性を訴えています。

拙著「やさしくわかるBABOK」でも組織的変革のSMEとそのやり方について解説しておきました。レガシーからERPに移行する場合の例での説明です。(P.215216

お持ちの方はご覧ください。

以下は抜粋です。(清水)

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変革をリードするSMEの役割は重要です。上の図のように、レガシーから新しいERPに移行していきます。図(のピンク色の矢印)からわかるように、どんな移行でもいったんパフォーマンスが下がるものです。慣れ親しんだ使い勝手の良い古いシステム(レガシー)です。最新のERPのパフォーマンスは高いかもしれませんが、移行当初は不慣れなため、そのパフォーマンスはなかなか発揮できないものです。これを恐れていると変革は実行できなくなります。そこで登場するのがこのSMEです。その代表的なやり方は次のようなものです。

 

1.  レガシー(従来のソリューション)のままではパフォーマンスが上がらないのみならず、組織の将来が危うくなる恐れがあることを明確に伝えます。

2.  変革を進めるために連帯チーム(アーリーアダプターが適切です)を結成します。

3.  ERP導入後の成功した将来像のビジョンを作成し、戦略を考えます。

4.  作成したビジョンをさまざまな方法で周知徹底します(ポータルサイト、その他)。

5.  アーリーアダプターの人たちに自発的に変革を体験してもらいます。

6.  その短期的な成功事例を認め、他の多くの人たちにPRしていきます。

7.  マジョリティの人たちにも、安心して移行を働きかけていき、さらに変革を進めます。

8.  変革を企業文化に定着させます。

         (ジョン・コッター「企業変革力」をカスタマイズしたもの)

尚、この文献はBABOK®ガイドの巻末の参考文献にも載っていますから、一読をお勧めします。

 

経営者もビジョン作成に協力する必要があります。

日本では残念ながらこの役割はあまりポピュラーではありません。それもERP導入の妨げになっている要因かもしれません。ビジネスアナリストはこのSMEの肩代わりをする必要があるでしょう。