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タスク7.4: 移行要求を定義する

20103月8

 

 


 

このタスクへのインプットは、以下の通りです。

 -組織の準備状況のアセスメント(7.3

 -要求[表明された]3.3

 -新ソリューション[デザインされた](例えばERP

 -従来のソリューション(例えばレガシー)

 

レガシー、ERP2つのシステムが併存する、移行期間に必要な要求を明確にします。

このタスクの中で実施するべきことは、以下の3つの要素が挙げられています。

 -データ

 -継続中の作業

 -組織的変革

 

「データ」はお分かりになると思います。旧いレガシーで扱っていたデータの形式が新しいERPで受け入れてくれる形式と同じとは限りません。そのためにはデータ変換が必要になることがあるでしょう。変換ツールを開発する必要があるかもしれません。また、従来にない新たなデータを扱えるようになるかもしれません。それはいつから、誰が入力することになるのでしょうか。

過渡期においては、レガシーとERPの両システムを併用して使う必要があるかもしれません。そのような場合、何をしたらよいでしょうか。レガシーで受注したデータは最後の出荷までレガシーで扱い、新たに受注するデータからERPに入力するのも一つの方法です。この特定の期間はレガシー、ERPを併存して使用します。移行期間における、使い方に関する要求をまとめる必要もあります。

 

前の「組織の準備状況をアセスメントする」タスクのアウトプットを活用した移行要求をまとめます。文化的側面を考慮した移行計画を要求としてまとめるとよいでしょう。

前回紹介した、4つの組織文化に応じた、移行要求に関するヒントを示します。ご参考ください。

 




 

【ビジョナリー文化】

ビジョナリー文化は起業家的ですから、変革を実施することに大きな抵抗はありません。安心して導入を進められます。多くの従業員が変革を支持してくれます。

ソリューションが彼らのビジョンの実現にどのように貢献できるかを明確にするとよいでしょう。また、ソリューション(ERPなど)が組織の求めている企業イメージにどれだけ合致するのかを示すことが重要です。日本で最初の導入になることにも誇りを持ってくれる文化です。


【実利的な文化】

効果を明確に示す必要があります。効果が大きいことが分かれば、抵抗が少なく導入できます。特に短期的な収益に貢献できるか数字的な裏付けが喜ばれます。マーケットシェアの増加などが最も好まれるものです。

実利的ですから実績を重視します。リスクを冒して、日本で最初に導入しようとまでは思いません。また、他社の動向を気にしますから、同じ業界での導入例を示すとより導入がしやすくなります。デファクトスタンダードを確立することに貢献してくれます。

 

【保守的な文化】

自社のプロセスを最も重んじます。必要に応じて、カスタマイズもしなくてはいけません。導入に時間がかかることも覚悟する必要があります。移行期間は長めに考える必要があります。

組織のプロセスに合わせられるソリューションの場合は、彼らの技術的な基準や業務プロセスにどれだけ合致しているかを示すと、導入がしやすくなります。そして、移行のプロセスを明確に示してあげることが大切です。充実した教育計画などを示すとよいでしょう。

ERPの場合は、組織のプロセスをシステムに合わせて変える必要があります。ところがそれを最も嫌う組織文化といえますので、要注意です。ERP導入の失敗の多くはこの文化が起因しているようです。

このタスクではなく、知識エリア「エンタープライズアナリシス」の「ソリューションアプローチを決定する」タスクで、フィージビリティ分析を行い事前の検討が必要です。

 

【価値重視】

ソリューションが組織の価値観にどれだけ貢献するかがキーとなります。価値観と整合すれば意外と問題なく導入することができます。そうでない場合は、受け入れることがかなり困難です。キャズムの理論でいえば、ラガード(懐疑派)の典型となります。

やはり、フィージビリティ分析の段階での検討が必要です。