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BABOK®2.0 エンタープライズアナリシス

200911月24

 

 

 

この知識エリアには5つのタスクがあります。

-ビジネスニーズを定義する

-能力ギャップをアセスメントする

-ソリューションアプローチを決定する

-ソリューションスコープを定義する

-ビジネスケースを定義する




 

ビジネスアナリシスの真骨頂です。この知識エリアがBAの価値を決めると言っても過言ではありません。ソリューションを開発する真の理由(ビジネスニーズをベースにしたものでWHYに相当します)を明確にします。

ビジネス機会(または課題/問題)を明確にし、競合との差別化、理想の状態(ToBe)と現状(As_Is)とのGAPGAPを解消するソリューション、ビジネスの収入増、コスト(ソリューション開発による)、そして最終利益を明確にし、ソリューション開発の最終判断の材料(をまとめたものをビジネスケースといいます)をスポンサーに提供します。そしてスポンサーは必要なソリューションへの投資を決断するのです。

どれだけ魅力的なビジネスケースを書けるかはビジネスアナリストの腕前次第と言えます。

 

他の知識エリアとの決定的な違いがあります。他の知識エリアのタスクは、一定以上のレベルのビジネスアナリストなら似た結果が出てきます。しかしこの知識エリア(エンタープライズ分析)では、ビジネスアナリスト個人への依存度がかなり高いという特徴があります。同じ現状を分析した結果、効果予測が収益30%増のソリューションもあれば、100%増のソリューションもありえます。必要な投資額も異なります。

スポンサー/組織にもよります。ハイリスクハイリターンを好むスポンサー/組織もあれば、ローリスク・ローリターンを好む堅実的なスポンサー/組織もあります。スポンサー/組織によってソリューション内容(アプローチを含めて)を柔軟に考える必要があります。ビジネスアナリストはそれらに柔軟に対応できなければいけません。

 

重要な知識エリアですので、以下にタスクの具体的な内容を簡単に説明します。

 

5.1 タスク: ビジネスニーズを定義する

Input: [ビジネスのゴールと目標]とタスク(3.3)のOutput[要求(記述)]

与えられたゴールと目標を確認します。

現状を把握し、ビジネス機会を最大にするためには何が必要かを考えます。

または、解決しなければいけない課題/問題を明確にします。

そして、望ましい結果(ToBe)を明確にします。

望ましい結果(ToBe)の例です。

-新製品またはサービス、競合弱点への取り組み、競合優位性の確立

-売上増による収益の改善

-従業員満足度の向上

-製品またはサービスの納入時間の短縮

Output: [ビジネスニーズ]

 

 

5.2 タスク: 能力ギャップをアセスメントする

Input: タスク(5.1)のOutput[ビジネスニーズ][エンタープライズアーキテクチャ]

現状のエンタープライズアーキテクチャをもとに能力診断をします。

そして、要求される新しい能力を診断します。

能力の例です。

-ビジネスプロセス

-アプリケーションソフトの機能

-エンドユーザの遂行する業務

-組織が創出する製品

Output: [要求能力]

 

 

5.3 タスク: ソリューションアプローチを決定する

Input: タスク(5.1)のOutput[ビジネスニーズ]、タスク(5.2)のOutput[要求能力]、[組織のプロセス資産]

ソリューションアプローチの例です。

-組織内の既存のソフト/ハードの活用

-ベンダーから新ソフト/ハードを購入(リース)する

-カスタムソフトを設計・開発する

-ビジネスにリソースを増加もしくは組織変更をする

-ビジネスのプロセスまたは手順を変更する

業務アプリソフトを作ることだけがソリューションではありません。組織変更やビジネスプロセスの変更(BPRを含む)までが、BAの業務の対象です。場合によっては、人材育成も含まれる可能性もあります。ですから、ITスキル標準も対象になりえます。ただそこまでBABOK®には明記してありませんが。

ビジネス目標と特定された能力GAPを解消するために、なるべく多くのアプローチ(選択肢)を考えます。そして診断し、最良な選択肢を選びます。

Output:[ソリューションアプローチ]

 

 

5.4 タスク: ソリューションスコープを定義する

プロジェクトやイニシアチブが実現するのはどの能力なのかを明確にします。

新しく必要とする能力の例:

-ビジネスプロセス、組織単位、アプリケーションソフトなど、ソリューションコンポーネントが
支援する能力

-新しい能力は単独リリースで実現するのか、それとも逐次的(スパイラルやアジャイル)に
実現するのか

スコープを定義し、ソリューションの主要な機能、何がスコープ内で何がスコープ外なのかを記述します。

そして実施方法のアプローチも明確にします。

 

 

5.5 タスク: ビジネスケースを定義する

ソリューションのもたらすビジネス上の効果(売上増など)を明確にし、コストを見積り、利益を計算します。予測できるリスクを診断し、対策を講じます。

スポンサーが投資を決断する材料として使われますから極めて重要です。

ここがうまくまとまらないと、プロジェクトは開始できません。